011 敦賀の旅~日本海の幸と日本三大松原を求めて~

日本語
ENGLISH

冬の青春 18 きっぷの最後の 1 回分で、私は福井県敦賀市を訪れた。以前から家族と何度か足を 運んだことがあり、その度に美味な海鮮を楽しんだ記憶がある。 今回もそれが目的の一つであることには間違いないが、主な狙いは気比の松原を見ることだった。


気比の松原は、日本三大松原の一つである。 松は本来、海水では枯れてしまうのではないかという疑問を抱いていたが、松は塩に強く、針葉樹 の為に風にも強い為、海岸に育つことが出来るらしい。 また、これら松原の松は全て、人の手によって植えられたものであるらしい。しかも、その用途の一 つは、塩を含む海風と、それによって舞い上がる海岸の砂から畑の作物を守る為とのこと。
ところで、通常は海岸には黒松が多いらしいが、気比は赤松が約 8 割を占めている。これは何故 だろうか?
赤松は黒松と異なり、真っすぐに伸びるものが多く、建築資材に向いているらしい。 また、松茸は通常、ほとんど赤松にしか生えないらしい。この 2 点から考えるに、昔の人達の商魂 の様なものが働いた様にも思える。
これらの事実を後で知り、私は気比の松原に対して単なる名勝地とは思えなくなった。 防風・防砂林として畑や町を守り、間伐材を建築資材に使用出来て、遂には松茸まで生えてくる。 名勝地としては余りに実用的で、防風・防砂林としては贅沢過ぎると思わざるを得ない。 見た目の美しさに留まらず、高い実用性まで兼ね備えられては、非の打ち所がない。何というオー ルラウンダーだ。自転車界におけるマテュー・ファンデルプール、ペテル・サガン。漫画界におけ る出木杉君(ドラえもん)の様な存在に思えて仕方ない。


先日に日本三景の天橋立に行ったが、そこも海を貫く通り道はあらん限りの松並木となっていた。 日本三大松原に属する気比の松原と、日本三景に属する天橋立。どちらも日本海に面した松並 木という点で非常によく似ていたが、何がそれを分けたのだろうと疑問を感じた。実は気比の松原 と天橋立のどちらも日本三景の候補に挙がったが、その松原を地上からだけでなく、高所から素 晴らしい景観で見られること(飛龍観)にある天橋立を日本三景の括りに入れて、松原のみに重点 を置いて気比の松原を日本三大松原に括られたのではないかと考えてみる。 すると、宮城県の松島はどうなのだろうか?比較も兼ねて、是非とも年内に行ってみようと思う。
敦賀は漁港としても非常に有名で、日本海の豊富な海の幸が獲れる為、港付近には飲食店も多 く立ち並ぶ。しかし、その多くは開店時間が 15 時頃までとなっており、夜に飲みに来る客を狙った ものではない様だ。
今回の昼食は「うお吟」であら炊き定食をいただいた。 魚はブリで、非常によく脂が乗っていた。特に目玉の周りが非常に濃厚で、あら炊きで脂がよく 乗っていることを感じたのは今回が初めての感覚だった。これは素材の力も間違いなくあるのだろ うが、何か調理法に違いがあるに違いないと思い、調理師に伺ってみた。結果的には、そこはお 店の企業秘密の様で、詳しく聞き出すことは出来なかった。 個人的には、脂をあまり流出させない様に、煮炊きの火力と時間は抑えめにしているのだろうとい う程度の推測をした。 煮汁の味については、酒や生姜の匂いを感じさせず、醤油と砂糖の効いた、白米にも良く合う味 付けだった。酒と生姜があらの消臭でほぼ役目を終えて退場し、あらの味に影響を与えないでいるのが良いと個人的には考えており、今回のあら炊きは正にその通りだった。


店舗の内装も美しく、御手洗の中も木板で囲まれており、供えられた花と併せて自然の芳香が 漂っていた。敷地内に小さな庭園があり、その向こうには現在は使われていない円卓があった。庭 園を眺めながら、円卓で食事を取るのは、とても優雅な時間だったことだろう。港のすぐそばにあり ながら、まるで明治時代の貴族の邸宅の様だ。


松の額縁に飾られた日本海という名勝を訪れ、魚介類をいただき、夜は温泉に入ってゆっくりする 。 人が少なく、空気も澄み渡る冬場にこそ、景色も魚介類も一層、深みを増すものだ。北陸からは勿 論、近畿や中部からもアクセスが良いので、是非とも訪れてみてほしい。

日本語
ENGLISH
日本語
ENGLISH

【悠々〇〇おすすめ記事】