018 和歌山編 第一話 旅のはじまりは邪気払い

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①1/29‐30 三重県松阪市、和歌山県北山村

【旧東海道碑。三重県桑名市の尾張橋西詰にて】

1月末、私は以前から興味のあった紀伊半島外周サイクリング旅を行い、和歌山県が行っているWAKAYAMA800というサイクルスタンプラリーイベントにも併せて参加してきた。
愛知県を出発して三重県を縦断し、和歌山県を海岸沿いに新宮市から和歌山県に入り、海岸沿いを走って和歌山市中心部に入るまでの行程である。旧国名で言うところの、伊勢国と紀伊国を一周した形だ。
合わせて紀勢と呼ばれる地域なのだが、この度の緊急事態宣言の対象地域ではないものの、全国的に帰省や旅行に対して心理的に規制がかかっているこの時期に、悠々と旅をしている私は、自粛と同調を求める社会の敵かも知れない。最初の2日間にかけて、三重や和歌山南部に強風警報が発令されていて、正に風当たりが強い旅の始まりだった。

私は初日は松阪市で宿泊したのだが、二日目には三重県を出て和歌山県に入ることができた。だがしかし、熊野を出てそのまま新宮市から和歌山県に入るというありきたりなことはせず、敢えて山中の北山村へと進路を取った。
17時を過ぎて薄黄色く暮れた空に静かな山中、水のさざめきも不気味な黄昏時。村へ進むにつれて、町から田園、林へと、風景から次第に人や商店の数が減っていった。この短い時間の中で、まるで現世と決別して出家をする過程を早送りで見ているかの様に、心なしか心細くなる感覚を覚えた。

【北山村の七色貯水池にて。しかし水面が七色に輝くわけではない。せめて頭上の電線の間に虹色が出れば良いのに。】

ここ北山村は和歌山県に属しているのだが、熊野市と奈良県に接していて和歌山県に接していない、いわゆる飛び地なのだ。これは日本全国を探しても他になく、北山村の唯一無二の特性である。しかし何故に飛び地になってしまったのか。同じく林業が盛んなお隣の十津川村の様に、奈良県に属していても違和感がないものに思える。
明治時代の廃藩置県の際、村民が和歌山県に属することを強く望んだと言われている。切り出した吉野杉を筏にして川に流し、新宮市まで運んでいたというので、距離はあれども和歌山県との繋がりが強かった様だ。
しかし資源を田舎から街に送るという状況を思うと、大抵は悪い扱いを受けがちな植民地に近い印象を受けたのだが、わざわざ村民が帰属を求めるあたり、北山村はきっと中心部と良い関係を築いていたのだろう。

そしてもう一つ、この村には日本唯一の特産品がある。柑橘類の一種「じゃばら(邪払)」である。「邪気を払う」という意味でその名が付けられたと言われており、北山村では、昔からお正月料理として慣れ親しまれているという。
フラボノイドの一種である「ナリルチン」という成分が、じゃばらには特に豊富に含まれている。花粉症やアトピー性皮膚炎、気管支喘息などのアレルギー反応の抑制に効果があると言われている。日本では2月中頃からスギ花粉が飛び始めるので、これを機にじゃばらを試してみては如何だろう?私は北山村の道の駅で購入し、ポン酢に含ませたり、スポーツドリンクに混ぜて使っている。

【じゃばら果汁100%。酸味以上に、特有の苦みが癖になる。】

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