028 全国酒蔵巡りの旅灘五郷シリーズ① 菊正宗

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私は五年前に新潟のとある酒蔵を初めて訪れてから、地酒と、それを造る酒蔵を面白いと思い始めた。
その後は旅をする度に、酒蔵巡りを組み込む計画を考える様になった。

そうして日本酒好きになった私の趣味・嗜好に基づき、全国に点在する酒蔵をシリーズに分けて紹介していこうと思う。
今回はその中の灘五郷と呼ばれる地区にある酒蔵の中から、菊正宗酒造の紹介と、併せて日本酒造りの基本的な知識についても触れよう。

灘の日本酒の生産量は今も昔も日本一で、加えて酒造好適米としても圧倒的なブランド力を持つ山田錦が開発されたことも手伝い、質・量の両面で名実ともに日本一と言えるだろう。
江戸時代には船で関西から江戸に数日かけて搬送され、江戸においても名酒として評判だったという。
現在でも、関東のスーパーマーケットで陳列されているのをよく見かける。

その中でもここ、菊正宗酒造は創業360年にもなる大老舗であり、辛口の生酛(きもと)造りが特徴的な酒蔵だ。

生酛造りというのは、日本酒を造る過程の内の一段階で、酒の素になる「酒母」を手作業で造ることである。

酒母とは、蒸米と水に麹、酵母、乳酸菌を加えたもので、生酛造りでは乳酸菌を手作業で培養して作り上げることだ。

手間がかかるデメリットと引き換えに、自然の中から作られた乳酸菌や様々な微生物による発酵が複雑で深みのある味わいを作り出す。

この生酛造りの過程で、米と麹をすり潰す「山おろし」の作業が入るのだが、これを廃止して乳酸菌の力だけで米を分解していく製法を「山廃仕込」という。山おろしは人の手で米や水の混合物をかき混ぜる重労働なので、これを廃止することで発酵に時間はかかるものの、労力は削減することができる。

この「山廃」の文字がラベルに書かれた日本酒を飲んだ人もいると思うが、生酛造り共々、価格帯は比較的高いものになる。人の作業分が乳酸菌に入れ替わっているだけで、決して手抜きをして不味いものになっているわけではないのだ。2019年にはヴィッセル神戸のイニエスタ氏がアンバサダーに就任している。特に日本酒離れが進んだ現代の若者に、日本酒の面白さを伝えるきっかけになってくれたらと思う。

そして私は、友人の結婚式にここの日本酒を贈った。彼等の将来と私達の友情に、この祝い酒を乾杯したい。
長渕剛を聴きながら、「遥か長い道のりを歩き始めた君に幸せあれ!」。

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