029 全国酒蔵巡りの旅灘五郷シリーズ② 沢の鶴

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今回の酒蔵は前回に引き続き灘五郷から、沢の鶴酒造を紹介しよう。

沢の鶴の名前の由来は、倭姫命(やまとひめのみこと)が伊勢の伊雑(いざわ)の沢で真っ白な鶴がたわわに実った稲穂をくわえながら鳴いているのを見つけ、「鳥ですら田を作って神へお供えを奉るのか」と感嘆し、その稲穂から酒を醸造して天照大神に奉納し、その鶴を大歳神(おおとしのかみ=五穀の神)と呼んで大切にした、という伊雑の宮の縁起が元になっているという。
(沢の鶴酒造HPの記載より要約: https://www.sawanotsuru.co.jp/site/company)

また、ここも菊正宗酒造と同じく、昔の酒蔵を資料館として開放している。
洗米から始まり、渋袋(しぶくろ)に入れて搾り出すまでの作業に関わる全ての道具が展示されており、最終的に江戸に輸送する為の菱垣(ひがき)廻船・樽廻船の見本も展示されていた。

今回の日本酒豆知識として、江戸時代の出荷方法の変遷についてお伝えしよう。
上記の菱垣廻船と樽廻船は、どちらも船の種類で、菱垣廻船から樽廻船へと移り変わっていった。
その最たる要因は出港までと輸送そのものの両面での時間の短さである。

菱垣廻船は多種多様な荷物を積み込み、船倉がいっぱいになってからの出港の上、大型で速度が遅い。その為、大阪〜江戸は平均して一月程を要した。
それに対して、小型で機動性に優れる上、酒類のみを積み込む樽廻船は積込にかかる時間も短く、平均一週間程で江戸に到着させることができたという。

話を現代に戻して、私は今回、沢の鶴の日本酒を数本、実家と箱根の知人の元に贈った。
午前中に発送依頼した荷物を翌日に時間指定で送ることが出来るあたり、江戸時代と比べて高速道路や鉄道の交通網の発展は目覚ましいと感嘆せざるを得ない。

沢の鶴も菊正宗と同じく、生原酒の無料試飲を行なっている。今回は記念館限定の生原酒と古酒漬け梅酒を試飲させていただき、その二本を箱根の知人に贈ったのだ。

原酒は度数が約17度で、一般的な日本酒に多い15度より高い分、鼻から抜けるアルコールの香りが強く出る。火入れも希釈もないので、濃い味になりがちで、辛口のお酒の原酒なのに独特の甘さを感じるという不思議な感覚を覚えた。

梅酒は一般的な焼酎漬けのものとは全く異なるマイルドな口当たりと、真っ直ぐな香りが感じられた。私は日本酒漬けの方が好きだが、元になっている酒の好き嫌いによって、ここの好みは変わるのかも知れない。

彼は箱根で働いていたお店を退職し、新たに飲食店を開業するという。彼が以前に働いていた店では箱根山や箱根街道を扱っていたが、今回のプレゼントを気に入ったら、江戸時代リスペクトで沢の鶴の日本酒を取り扱うかも知れない。

私は旅と日本酒を愛し教える宣教師、酒乱シスコ・旅デルになりたい。

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