まだ築地市場が豊洲になかった頃、GWに友人と築地に遊びに出かけた。
彼のノルマであるつきぢ松露の卵焼きを買いに場外市場に出かけて、その用事が終わった後も引き続き市場を見回っていたところ、市場の中でも一際通る声が聴こえてきた。
「出来る男はナッツが似合ッツ！」
「美味しくってアーモンドうしよう！アーモンド食べて自分の殻を破ってみてください！」
「殻むくと前向きな気持ちになりますよね」
ドライフルーツ屋かな？と思いながら、その良い声に惹かれて我々二人はホイホイ立ち寄った。
そこには良い笑顔と美声で海苔やドライフルーツを売る笑顔のおじさんがいたのだ。その人こそ、鳩屋海苔店の店主、鵜飼友義(うがい ともよし)さんだ。
彼の熱い接客を受けて、私は海苔やナッツ類を試食させてもらった。その間にも彼の名言は湯水の様に湧き出てくる。
「あら、お海苔好きですかお客さん！」
「昼間っからルービー(ビール)を誘発する海苔ペッパー、食べてみてください！」
「(爪楊枝を差し出して)海苔のサルベージ、救出活動に使って下さい！」
商品の美味しさもさることながら、彼のノリの良いトークに終始笑いが絶えず、私達以外にも足を止めるお客さんが周りに集まっていた。
私と友人は海苔と海苔ペッパーを買い、家に持ち帰った。
一通り市場を見回り、昼食に海鮮丼を食べて、大変満足な一日だったのだが、いつまでも彼のノリノリトークと海苔の味が忘れられなかった。
そんな鵜飼さんは現在、自民党の千代田区議会議員だという。きっとあの美声が響き渡っていることだろう。
