033 自転車登坂日記 ②赤城(あかぎ)山〜人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし〜

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今回の自転車登坂日記は、前回の榛名山と同じく群馬県から、今回は前橋市の赤城山を紹介しよう。

赤城山は榛名山とそう遠くない位置にありながら、状況やルートは様々な点で対照的だった。
前回は二人で、冬で、勾配が非常に厳しい箇所が幾つかあった。翻って今回は一人で、真夏で、安定した勾配を登り続けるルートだった。

ヒルクライムもインターバル型とTT型で、どちらが得意かはライダーで分かれる。そのスタイルは人生の生き方も反映するところがあるが、読者の皆様はどちらの人生が得意だろうか?ちなみに私は走りも人生面も明らかにTT型である。

麓にある赤城の大鳥居をくぐり抜けて4号線を登り始める。頂上の大沼の側に赤城神社があるが、ここから既に神社のエリアだということなのかもしれない。
神道や修験道で言うところの山岳信仰の対象ということだろうか。クライマーも何度も同じ山を登ることで、山への祈りを捧げていると言えるかも知れない。

約20Kmを登り続けて赤城山の頂上に辿り着くと、大沼という大きな湖があり、そのほとりには赤城神社がある。赤城神社では相殿に東照大権現・徳川家康を祀り、徳川将軍家をはじめとして諸大名の信仰が厚く、三代将軍の徳川家光は社殿の再建を命じたという。
栃木県日光市の東照宮と言い、ここ赤城神社と言い、東京都のみならず関東の重要な神社、仏閣やパワースポットに徳川家の力が及んでいる様だ。

その徳川初代将軍の家康は、こんな言葉を訓戒として遺している。
「人の一生は重荷を負て遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。
不自由を常と思へば不足なし。心に望みおこらば、困窮したる時を思ひ出すべし。
堪忍は無事長久の基。怒りは敵と思へ。
勝つ事ばかり知りて負くる事を知らざれば、害その身に到る。
おのれを責めて、人を責むるな。及ばざるは過ぎたるよりまされり」

幼少期に今川家の人質となり、織田や豊臣と共闘し、時に無茶振りを受けながら忍耐強く生きてきた家康だからこそ、この考えに到ったのだろう。彼の人生観を現す名言だ。

自転車乗りの中でも特にクライマーは、斜度が増すほどに重くなる重力を背負い、苦しく長い登坂をペースを刻んで登り、体重を減らす為に普段の生活も摂生を心がける必要がある。この遺訓を地で行く生き方をしていると言えるのではなかろうか?

徳川家康が現代に生きていてロードバイクに乗っていたとしたら、ヒルクライムやエンデューロで活躍していたかも知れない。
我々も苦しい時に彼の遺訓を思い出すことで、ヒルクライムのみならず人生そのものの難局も乗り越えていきたい。

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