044 退職して全国各地の友人を訪ねてみた②守山市のM君

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退職して全国に散らばる友人を訪ねるシリーズ第2回は、滋賀県守山市在住のM君について。

彼とは前職で2年程、同じ事業所で働いていた。彼は技術者で開発サイド、私は営業・事務だったが、昼食時や寮に帰宅した時はよく一緒に集まり、お互いの仕事や私生活のことを話していた。
二人して前職を退職した後も、時々はお互いを訪ねて食事や遊びに出かけている。

2020年の年明けに敦賀を旅した帰り道、北陸本線と湖西線を使って彼の住む家を訪ねた。そのまま大阪に帰ろうかとも思ったが、敦賀駅で見つけた敦賀の梅酒と水羊羹を見つけて、敦賀から滋賀には行きやすいことを思い出して進路変更をしたのだ。

水羊羹といえば一般的には夏に涼を取りながらいただくイメージがあると思うが、福井では暖かい部屋で冷たい水羊かんを食べるのが冬の楽しみだという。
他県で言うところの、コタツでみかんを食べる様な感じなのだろう。
そして今回購入した水羊羹だが、敦賀で有名な御菓子司 森本という老舗の製品だ。弾力がありつつ柔らかい食感と、餡の濃厚な味わいは、いつ食べても美味しいものだった。
今回はM君と夜は梅酒、朝は緑茶と一緒にいただいた。アルコールもカフェインも、糖分で和らぐ様だ。

その晩酌から時を少し遡り、何か面白いことはないかと彼と話し、その夜は彼の発案で勝部神社の火祭りを見に行くことにした。
静かな冬の夜に賑やかな人通りが守山駅から出来ており、その中に我々も潜り込んで列を作った。

神社に着くと、中心の空き地を囲う様に、大勢の人だかりが出来ていた。そこには巨大な松明が運び込まれており、火祭りの名の通り、これらが燃え上がるのだ。

火祭りの起源は鎌倉時代にまで遡り、土御門天皇が原因不明の病にかかり、それを占い師に相談したところ、近江国の大きな沼にすむ大蛇が原因とわかったという。
勝部神社で村人と共に天皇の回復を祈り続け、50日後に現れた弱った大蛇を焼き払うと天皇の病気が治ったとの伝説から、大蛇に見立てたたいまつを燃やし、1年間の健康を祈る祭として行われている。

勝部神社の創建は649年で、1497年に再建された本殿は、国の重要文化財になっている。
更に1958年、この祭は県の選択無形民俗文化財に指定されたという。

ところで、日本神話の八岐大蛇や聖書の楽園の蛇、今回の大蛇といい、蛇はやたらと悪者として取り上げられている様に思われる。
しかし日本語における“悪”という文字には、剽悍さや力強さの意味もある。悪党という言葉も、元は既存支配体系へ対抗した者・階層を指していた。

そこから考えるに、蛇には単に悪の手先というのではなく、強者としてのイメージを持たせているのだろう。実際、強力な毒を持つマムシやキングコブラ、世界最大種のアナコンダ等を除いても、自分以上の大物を丸呑みにする蛇は存在する。

強い敵を倒してこそ、主役の力は際立つ。勧善懲悪ものが面白くなるのは、こういうところにあるのだろう。

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