060 全国酒蔵巡りの旅 : 弘前市 三浦酒造

日本語
ENGLISH

ここ数年、私は夏になると毎年、青森県に訪れている。
春や冬にも来ることはあるが、夏に来る主な理由はやはり、快適な気候と自然の中でサイクリングや旅を楽しむことが出来ることにある。
今年はまだ行けてないのだが、私が青森県で初めて訪れた酒蔵であり、その後2回訪れている弘前市にある三浦酒造についての話をしよう。

三浦酒造の創業は昭和5年(1930年)で、平成19年(2007年)に三浦酒造株式会社として法人化したという。
家族中心の小さな蔵で、岩木山・赤倉山系の伏流水と契約栽培された良質の酒造好適米を用いて、造り手の顔がみえる丁寧な小仕込みにこだわって酒造りを行っている。
私も3回の訪問の結果、「遠方から自転車で買いに来る人」という認識を持たれている(笑)。暑い夏の日に行った時、林檎を切っていただき、その林檎がとても美味しかった記憶がある。

代表銘柄である「豊盃」の名前は、津軽為信公が戦場で兵士の士気を鼓舞するために唄った歌「ホウハイ節」のユ-モアと勝利にあやかって命名されたという。
青森県の民謡でもあるこの曲だが、私はこれを聴いて士気が上がるというよりは寧ろ、終戦後のお祭りや宴会で流して盛り上がる楽しさを感じる。

豊盃には、全国でも三浦酒造だけが契約栽培するこだわりの「豊盃米」をはじめ、青森を代表する酒造好適米「華吹雪」「華想い」から、代表的な品種である「山田錦」「亀の尾」等、良質な契約栽培米を中心に、自家製精米で丁寧に醸されている。
青森県の酒といえば、西田酒造の「田酒」が県外でも非常に人気が高いが、豊盃の県内での人気は田酒のそれを凌ぐとも言う。

ちなみに私の豊盃との出会いは、私が初めて青森県を訪れた2016年のお盆休みの頃、青森駅近くにあるアウガ地下の市場で土産物を物色していた時だ。
酒屋で田酒を手に入れるのと同時に、別の地酒もほしいと思い、特別純米酒を見つけ、帰って飲んでその美味しさに惹かれたのだ。

その後は生酒、蔵限定酒、そして通常ラインナップの最高峰であるつるし酒まで飲んできた。
ものにもよるが、概してスッキリしつつ柔らかな味わいを内に、表面から香る様なアルコール分がちょうど良い具合だ。実は私の日本酒嗜好のスタンダードを決定付けた日本酒だと思っている。

そして私が見てきた限り、気合の入った期間限定酒をちょくちょく販売する酒蔵でもある。
豊盃米を30%まで磨いた 、1本3万円の「最初で最後30」と、「2020 純米大吟醸 山田錦20」を私は目にしており、後者は私も実際に買って飲んだので、最後に少しその話もしておきたい。

令和2年(2020年)2月20日発売、200mlで価格が税込み2,222円という2尽くしの日本酒で、2020年のオリンピックイヤーを記念した様な豪華な日本酒だ。
兵庫県産の山田錦を使い、おまけに精米歩合20%まで磨き上げた日本酒は、私は見るのも飲むのも初めてだった。

いざ飲んでみると、雑味のかけらもないクリアさに、極限まで贅肉を削ぎ落としたサイクリストやボディビルダーの様な機能美や美学を感じた。

この様に磨きをかけたキレの鋭い日本酒は勿論素晴らしいのだが、磨きを抑えた、米の芳醇さや癖を活かして作るお酒もまた個性を感じられて面白い。
オリンピック競技で例えるなら、前者はロードレース、後者は柔道の重量級だろうか。

そしてその東京オリンピック・パラリンピックも、本日(9/5(日)、作成時点)でいよいよ終わりだ。
いざ終わりが来て振り返ると、獲得メダルの結果だけではなく、焼きついた瞬間の素晴らしい記憶も沢山残った筈だ。
この日本酒も、瓶の中身は単に日本酒だけではなく、ある特別な意味を私にくれたのだ。だがそれが何なのか、敢えて語るのは今回はやめておくのが良いのかも知れない。

※参考資料:三浦酒造株式会社HP(https://houhai.co.jp/)

日本語
ENGLISH
日本語
ENGLISH

【悠々〇〇おすすめ記事】