「パスポートがなくても、USAに入国できる」
ある初夏の頃、私は別府市スタートで北へと走っていた。左右を山と田畑に囲まれた田舎道を走り、海に臨む国東半島を流していた。しかしその少し前のお昼時、私は気付けばUSAに入り込んでいた。
これは白昼夢だろうか?お昼に「潮から豚ぼ」で食べた唐揚げはとても美味しかったが、そのまま眠って夢でも見ていたのだろうか?
ところがどっこい‥‥‥‥夢じゃありません‥‥‥‥! 現実です‥‥‥! これが現実‥!
…はい。お察しの通り、”United States of America(アメリカ合衆国)”ではなく、文字通りの” USA(宇佐)”です(笑)。
ここ大分県宇佐市は、その名前の為に、アメリカを思わせる看板やオブジェが複数見受けられる。
ちなみに電車の宇佐駅の表示は下の通りで、明らかに狙っている(笑)。
アメリカでオバマ大統領が誕生した時などは、福井県小浜市がTVで取り上げられたりもしたが、こういうニュースが流れる日本は平和だなと、微笑ましく思う。
ここ大分県宇佐市と言えば、全国に4万社余り存在する八幡宮の総本宮である宇佐神宮が建っていることで有名だろう。
八幡信仰は日本神道における最多数派で、その次に伊勢信仰、天神信仰、稲荷信仰と続く。以前に浅間大社の話で取り上げた浅間神社は全国に約1,300社で、八幡神社の規模が如何に大きいかが分かるだろう。
因みに滋賀県大津市には似た様な名前の”宇佐八幡宮”があるが、これは総本宮ではない。そして更に同県には近江八幡市があり、中々にややこしい。
では”八幡”とは何なのか?それは八幡大神という、応神天皇の神霊のことだ。
571年に彼は宇佐の地に降り立ち、大陸の文化や産業を輸入し、新しい国づくりをしたという。
そして725年、現在の地に御殿が建てられ、八幡神を祀り始めたのが、宇佐神宮の創建の由来だ。
生前の功徳や功績を讃えられて神様になったと言うことで、徳川家康の東照大権現の様なものだろう。
そして八幡信仰とは、応神天皇の聖徳を八幡神として称え奉るとともに、日本国固有の神道と、外来の仏教文化を習合したものとも考えられている。
彼の大陸との交流政策の中で、養蚕や機織り、鍛冶や酒造の技術も伝来する中、儒教も伝わってきたという。
更に先行して大陸から伝来した仏教については、後に宇佐八幡の禰宜が東大寺の大仏建造にも一役買ったといい、その功績もあって朝廷から仏教守護の神として八幡大菩薩の神号を賜ったという程、深い関係がある。
日本固有の神道に、外国から伝来した仏教も取り入れる(神仏習合)様に、日本は古代の頃から異なる文化を受け入れる多様性や寛容さを持っていた。
第二次世界大戦後における敗戦と占領軍の統治は確かに屈辱の歴史でもある一方で、それを受け入れて発展してきた面もある。
文化的には中国や朝鮮、ヨーロッパやアメリカ等との実に多種多様な混血と言えるだろう。
日本神道の最多数派である八幡信仰でさえも、外国の宗教である仏教を取り入れている。
その総本山である宇佐市だからこそ、USAと名乗っても単なる悪ふざけではないのだ。
参考資料:宇佐神宮 公式HP(http://www.usajinguu.com/)