069 関西旅行記②京都 中編:くじからラーメン 複雑に混ざり合う人生の味

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大阪駅から特急列車に乗り2時間程、彼と引き続きお喋りを楽しんでいる内に気付けばお昼時。我々は目的地の天橋立駅に降り、昼食を食べるお店を探し始めた。

焼鳥、カニ、和食…多種多様な飲食店が立ち並ぶ中、一際目を引いたのは、駅前の「くじからラーメン」だった。
このくじからラーメンは、「くじから(九力)醤油」というものを使っているのが特徴で、それは丹後地方に点在する九種の調味素材を元に、大量の刺身醤油と肉を使って三日三晩炊き上げるという。

これだけを聞けば、まるで拘りのラーメン名店のスープに与えられる謳い文句の様で「さぞ美味しいことだろう」と思うことだろう。
しかしこの話のオチは、まさかの失敗に終わることに留まらず、改良を試みるも更に現在にわたって失敗・迷走しているという。
遂には、濃色薄味、こってりあっさり、不味いが美味い「常識の盲点を突く矛盾の醤油」と開き直り始めた。

今回、彼が真っ先に通常のくじからラーメンを注文したので、私はくじから醤油が少なめの鶏白湯ラーメンを注文した。
鶏白湯ラーメンは癖がなく、スープの滑らかな舌触りに乗せられて麺も進む王道の出来だった。
そしてそこに幾らかのアクセントを付け足そうとして、彼から通常のくじからラーメンをもらって食したところ、醤油らしからぬ酸味が印象的だった。
醤油ラーメンとして考えると非常に癖の強いもので、ともすれば地方の中国料理の様な面白さを感じた。

店主自身も毎度のことどうやって作ったのか思い出せないらしく、二度と同じものが作れず、今後も店長のさじ加減でどう変化していくか分からない様だ。
飲食店の基本である「安定した品質の提供」というものに真っ向から対立しているが、そんな個性も悪くない。

次回は今日食べたものとはまた違った味のラーメンを食べられると思えば、それはそれで再来店を楽しみに出来そうだ。

試行錯誤し迷走し、成功する時もあれば失敗する時もある、そんな店主の人生を楽しむ一杯に出会うことが出来た。

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