前回の投稿からかなり間を置いてしまったが、前回に触れた富士山モデルの絵画作品について、もう一つの有名作品についても少しだけ紹介したいと思う。
『富嶽三十六景』という作品をご存知だろうか?
前回投稿で取り上げた歌川広重作の『冨士三十六景』と名前がよく似ている通り、同じく富士山の景観をモデルにした三十六枚の絵画集だ。
あるいは名前を知らなくても、その作品の中でも有名な『神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)』の画像を見れば、きっと「これだ!」と思う筈だなので、画像を下に載せておこう。
※画像は東京富士美術館HPより参照
現在の横浜本牧沖から富士山を眺めた絵で、不動の富士山に対する激動の波浪と、それに振り回される船の漕ぎ手という構図が静と動の対比を強く出しており、世界的にも評価の高い絵と言われている。かの有名なゴッホもこの作品を賞賛したという。
江戸時代の鎖国体制の下でも、オランダとは交易が行われていたというので、こういった文化面でもオランダから日本だけでなく、日本からオランダに影響を与えたものもきっと沢山あったのだろう。
完全なる余談だが、痩せ型の力士を「そっぷ型」と言うが、語源はオランダ語の”soep(スープの意味)”で、スープの出汁を取った元のガラに例えた呼び方らしい。
対義語は「あんこ型」で、餡のあんこではなく魚のあんこうが語源らしいが、何故に痩せ型の方だけオランダ語が語源なのだろう?実はオランダ人が痩せ型の力士を見て話していた内容を、通訳が良い感じに意訳したのかも知れない。
さて、本筋に戻ってそろそろ作者の名前を出しておこう。有名なのでご存知の方も多いと思うが、葛飾北斎という江戸時代の画家だ。
北斎は主に江戸で筆を振るった名画家だが、晩年に長野県の小布施に移って活動していた時期があった。それが所以で小布施には北斎の美術館があり、私はそこを2年前に訪れた。
自身を「画狂老人」と称した彼の作品には、素人ながらも技術的な精緻さだけでなく、力を感じたものだ。
下の画像は『龍』で、展示されていた祭屋台の天井画だ。お馴染みの波浪が描かれていて、これを見て北斎作品だと看破できる人も多いだろう。
狂気を感じる程に没頭し、死ぬ間際まで描き続けたのだろう。彼は90歳まで生きたというが、私も死の間際まで何かを発信できる人間でありたいと思った。