
この日は留萌から最北端の稚内まで走る予定を立て、実際に走り切った。距離にして約200kmで、普段はあまり走らない長距離だ。
しかし北海道の日本海側をひた走るオロロンラインの信号の少なさと、適当なところに道の駅が複数あることから、いけると確信して計画した。
自転車でこの距離を走ると言うと、一般的には自転車に乗らない人は勿論、バイクライダーも驚く程だ。クレイジーだと言われることもあるし、実際一理ある。今回のライドにタイトルをつけるなら、”CR(クレイジーライド) 留萌〜稚内”だろうか、パチンコの様だ(笑)。
一日を振り返ってみると、激アツ演出はなかったが、ちょっとしたピンチの腹痛がありつつも、結果的に無事に最終目的地まで到着することができた。
パチンコでいえば、大勝ちはしていないが負けていない、平和な結果だろう。
昨日と同じ様に左手に日本海を眺めながらオロロンラインを走り続け、最初の休憩はにしん番場のある小平町で取り、その次は羽幌町のフェリーターミナル周辺で昼食休憩とした。
この日の昼食はエビ丼で、加えて味噌汁にもエビが一尾入っており、エビ尽くしだ。頭付きで10尾以上もの新鮮なエビが乗っており、殻や頭まで食べる私にとっては満足度が高かった。

沢山のエビを食べてカルシウムやタンパク質を、汁やご飯から糖質や塩分を補給して体力を回復し、再び北へと長い道のりを走り出す。これでもまだ140km程も残っていると思うと、今日は稚内到着は何時になるだろうかと思いながらも、何があろうと走れる限りは走るしかないと覚悟は決まっていた。
その中でできる限り途中の道の駅での休憩やちょっとした観光の楽しみは疎かにしないことも心に決めて、この旅路を楽しもうと思った。
「どんなに遠くても たどり着いて見せる」。心の師匠が歌った詩を復唱してみる。途中で謎の腹痛に見舞われながらも、諦める気にはならなかった。
およそ20-30km毎にある道の駅に寄りながら走っていると、一つ前の道の駅で出会った人に再び会うことも何度かあった。
特に印象的だったのは、稚内直前の最後の道の駅の天塩(てしお)で出会ったライダーの男性だ。
お互いに当日の目的地は同じ稚内だった。彼はバイクなので宗谷岬まで同日中に行くとのことだったが、私はそれを2日後に予定していた。
彼とは翌日に訪れた礼文島でも再び出会った。同じ宿ではなかったが、私は翌日にある有名な宿に泊まっており、彼も見に来たそうだ。
道の駅の天塩に到着した時点で16時頃。日没までは3時間余りでまだ時間はあるが、まだ70km程残っていた。少し疲れも出ていたが、稚内グルメへの期待を胸に走り出した。
ちなみに天塩にはロコン、アローラロコンのポケモンマンホールがあり、撮影スポットとなっている。
私はPokémon Goはやっていないが、もしかしたらこの辺りではロコンが出現するのだろうか?

天塩からはJRの通る山中を走り、海と山の景色から田園風景へと変わった。陽射しが弱まり、走り易い気温になったところで、最後のスパートをかけるの思いきや、ペースを少し上げたところでキープして走った。一人だけ、地元の高校生と思しきライダーとすれ違って挨拶をする。
前日も本日も、オロロンラインに入って厚田を越えてからはサイクリストは殆ど見なかった。とても走り易い道ではあるが、やはり次の町への距離が長いからだろうか。同じ目的地へと向かうライダーがおらず、今日も今日とてソロライド真っしぐらだ。
そして19時、遂に稚内市街にたどり着き、『ついに来た北 最北端』と駄洒落を思いついたが、誰に言うともなく、夜の稚内駅で記念撮影をした。

その後はすぐにその日の宿『ゲストハウス モシリパ』へチェックインした。走り出して約10時間、長いライドだった。
モシリパは夫婦と子どもの家族で経営していて、旦那さんは外国人の様だ。もし日本生まれではないとしたら、北海道の中でも最北端の稚内を目指して来た意気込みは凄いものだと思った。もう少しゆっくりできたならもっと話をしたかったが、短い滞在時間ながら稚内は良い町であったし、丘珠空港から飛行機で来ることもできるので、またゆっくり訪れた時に話を聞こうと思う。
宿に荷物を降ろし、紹介されたスープカレー屋『プチGARAKU』にて『特製ジンギスカンのやつ』にチキンレッグをトッピングしたものを食べて一息着く。走る間にも小休止は何回か取ったが、やはり全行程を終えた後の休憩は格別だ。
その後はわっかない海の駅にあるスーパー銭湯に向かい、温泉に加えてサウナと水風呂を楽しみつつ、露天風呂で星空を眺めて今日という日を振り返る。
露天風呂に浸かりながら空の星を見上げて、長かった一日の終わりを思う。ちょっとしたショートフィルムでも作れそうな満足度の一日だったと思う。
しかし今回の私の旅はこれで終わりではない。稚内の更に先、離島の礼文島への船旅の翌日に続く。