全国グルメレポート⑥おだし食堂

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前記事のすみれの味噌ラーメンを食べた後で2時間と待たずに、私は次の店を探し歩いていた。
旅先での食べ歩きをする際は夜の食事の前に夕方に軽く食べることは多いが、2食とも夜の食事の感覚で2軒目を行くことは割と珍しい。しかしこの日は倶知安からの約100kmを自転車で走っていたのと、2日前に札幌から倶知安への同じく約100kmライド、そしてその翌日の霧の中の神仙沼へのヒルクライムというやや過酷なライドをこなしていたこともあり、2食目を行く余裕があった。

そこで私が2軒目に選んだのは、狸小路にある『おだし食堂』だ。実は今回、札幌を訪れた初日から目をつけていたのだが、残念ながら早々に満席・締切となってしまっていたのもあり、今夜こそはと思って狙いを定めていたのだ。
時間はおよそ18:30。夕食時として混み合う時間だが、今回は運良く空いており、並ぶことなく入店、着席できた。その後20分と経たずに満席になり、行列ができ始めたのを見て、巡り合わせの時が来たと実感した。

ここ、おだし食堂は名前からは想像し難いと思うが、なんとスープカレーのお店なのだ。いかにも和食店の名前と内装からスープカレーが出てくるのだが、そのスープが所謂、和食の出汁の様で、それがこの店名の由来の様だ。

今夜、私は極上出汁スープカレーセットに、限定10食の十勝ハーブ牛の炙りを付けたディナーメニューをいただいた。ほうじ茶ご飯、すだちと鰹節にとろろ昆布といったトッピング、富良野ポークのフランクフルトを備えたセットで、スープカレーとフランクフルトを除けば正に和食といった様相だ。
メイン食材も、スープカレーの定番のチキンレッグではなく、宗八ガレイの一夜干しで、出汁と相まって和食感を醸し出していた。

いつも通り、先ずは一口目にスープを飲んでみた。前のラーメンといい、やはり汁物は最初の一杯で全体を強く印象付けられるもので、今回の食事に対する印象のキャッチコピーが生まれた。

「今まで食べてきたものをスープカレーとしたら、これはスープカレーではない」
始めの数口を賞味した際は和食の出汁としての印象が強く、次第にカレーが勝って一粒で二度美味しいスープだ。その後に付属トッピングの鰹節やとろろ昆布を入れてみると、再び和の味わいが生まれた。味わいが二転三転する、魔法の様なスープカレー、正に「インド人もびっくり」の日本料理の神秘があった。

十勝ハーブ炙りは視覚的にも面白く、外国人観光客にも喜ばれるのではないだろうか?(同じ時間にいた外国人家族も注文していた)
これは塩を振ってご飯と一緒に食べると、上質な和牛の味わいを堪能でき、スープに浸せばエスニックになり、これまた味の変化が面白かった。一緒に飲んだラベンダーティーが、この牛肉によく合い、脂と塩気の旨味に爽やかな後味を添えてくれた。

 食事に使用された素材は全て北海道のもので、地産地消やSDGsを意識した、良い意味で意識の高いお店だ。これを高尚なものとして敬遠せず、スタンダードとして定着させていくことがこれからの時代には必要なのかも知れない。

素敵なスープカレーとの出会いを楽しんだ後、外の夜風を浴びながら、ラーメンとスープカレーの2つのスープ料理によって温かく満たされた身体を馴染ませていた。
豪勢とは言わないが、北海道の広大な大地と海の豊かな恵みが凝縮された素材の味わいを喜ぶ、そんな満足があった。今回の北海道旅行の最後の夕食として、幸せな気持ちで締め括るのに充分な喜びを得られた。これからもそんな食事との出会いを求めていきたいという想いを胸に、旅を続けていこう。

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