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神話の郷・鳥取 山と海の旅路
第三章

山の朝、静けさと冷え込みの中で目覚めた朝は清々しく、昨日の温泉のおかげで疲れも取れて良い目覚めだった。朝食をいただき、何気なく外に出て散歩でもしようとおもって宿の側の階段を少し登ってみると、大山頂上までの案内があった。
そこには2.6kmと書いてあったが、登り切った後から思えばそんなに短くはなかった様に思った。しかしそれに騙されて軽い気分で登ってみようと思い、私は頂上へと歩き出した。この時、既に9時を回っており、降りてくる人もそこそこいた。

600mlの水ボトルのみを持ち、土を主として少しの木と石で覆われた道を時に軽やかに跳び、時に高い段差を腿を高く上げて登っていった。ジャージを着ていたが、走っている内に呼吸が上がってきて汗が出てきたので、途中の木に引っ掛けておいて、帰りに回収した。
そうして頂上に到着する頃にはほぼ11時で、そこでは風が強く吹き荒ぶ中、ダイセンキャラボクが群生していた。震える程ではないが、途中でおいてきたジャージがほしくなった。

頂上で記念撮影をし、他の登山者としばし話をした後、名残を残さず下山を始めた。頂上を去る時、カラスが2羽、天高く飛んでいた。街中で見かけるカラスとはまるで違う、鷹の様に力強い飛翔だった。
大山には鴉天狗の伝説が根強く残っているが、あれは普通のカラスではなく、鴉天狗だったのかも知れない。

記事内容2: 登山口まで降り、名物の大山おこわを食べた後、昨日に通った道を戻って鳥取市内へと向かった。
左側通行の日本なので、日本海をより近くに見ての道のりとなり、更に前日に劣らずの快晴だった為、今回も晴れやかな気分で走ることができた。
昨日に1時間かけて苦労して登った大山の12kmを、降りは20分足らずで終わらせ、一度だけ休憩した後は一気に鳥取市内へと走り切った。

そして今回の宿泊先へと到着した後は、夕食の前に近くの銭湯へ向かった。鳥取市内も大山の温泉を引いており、銭湯で温泉に入ることができることをとても嬉しく思った。
温泉の温度は高く、出入りを何度も繰り返して慣らして入っていると、そこそこ長湯になるが、その時間で現地の人達と話が弾み、私は自転車、彼等は昔はバイクで旅をしていたことや、かつて大阪に住んでいた時によくフェリーで九州方面へ旅をした話などで盛り上がった。

そうして温泉と会話を充分に楽しんだ後、宿に戻って夕食にした。ここで初めて魯肉飯を食べたのだが、主に八角の香りがついた豚肉のキャラの濃さに対して、カリフラワーや人参等のおかずの優しさで上手く調和が取れており、両極の味覚を楽しみながら最後には平静に落ち着く様な味わいだった。
しかし流石にそれだけでは物足りなかったので、チキンフォーを追加注文し、腹6分目程で留めつつ、爽やかな酢橘の酸味やスパイスの香りでアジアの味を楽しんだ。

食事を終え、その日のベッドを見てみると、『怪盗キッドの部屋』と書いてあった。まだ作品をそこまで読んでいないので分からないのだが、怪盗キッドの部屋はこんな感じなのだろうか?
そのビジュアルから私が想像した彼の部屋はスイートルーム顔負けの豪奢なものだったのだが、もしそうでなかったとしたら確かにこれくらい素朴な方がありそうではあった。
怪盗の大仕事を終えた後に帰る部屋は、ともすれば何もない様な質素なものの方が、その興奮を静かに冷ますのにちょうど良いのかも知れない。

怪盗とは打って変わって、平穏な日常を過ごす私にとっては、怪盗キッドとは別の理由でこの薄暗さが馴染むのだろう。狭くて暗い場所が落ち着くのは、共感も得られそうだ。
かつて洞窟をねぐらにしていた時代の人々も同じ様に感じていたのかも知れないなどと考えながら、暗闇より深い無意識の海へと溶け込む眠りに落ちた。

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