日本の都道府県には各々に国の出先機関である庁舎が置かれている。
明治時代に行われた廃藩置県政策の推進による、中央集権体制の確立の為の施策であり、基本的に各都道府県の最も人口の集中する中心部に置かれるのが常だ。
そして各都道府県庁の所在地については、小学校の地理の授業で覚えた方も多いと思う。
しかし例外的に、県庁所在地より人口が多い市のある県が五つ存在する。その市名は下記の通りだ。
①福島県(福島市):いわき市、郡山市
②群馬県(前橋市):高崎市
③静岡県(静岡市):浜松市
④三重県(津市):四日市市
⑤山口県(山口市):下関市
例えば群馬県の県庁所在地は前橋市なのだが、お隣の高崎市の方が栄えているのは何故だろう?人口も少し多く、何より北陸・上越新幹線が通っている。
人口面では、平成の大合併で高崎市が榛名町など5町村を編入したことが要因だ。自転車登坂日記①でテーマにした榛名山が高崎市に属している理由でもある。
静岡県の浜松市はスズキの本社があり、浜名湖ではボートレースも行われる。同じ静岡県の磐田市に本社を置くヤマハ発動機にとっても、ボートレースは力の見せ所だ。
三重県の四日市市はコンビナートや工業地帯による雇用効果が大きいと思われる。
面積は津の方が明らかに大きいので、四日市の人口密度は高いことだろう。
山口県の下関市は湾岸都市として栄えており、企業の拠点が山口市ではなく、ここに置かれる事も多い。
更に関門橋を通じて隣接している政令指定都市の福岡県北九州市との交流が盛んな為、そこから流れて人口が多いのも頷ける。
そして福島県については、南部のいわき市が人口・面積の両面で県下一番で、二番目に郡山市があり、三番目でようやく県庁所在の福島市だ。
二つの市に人口がバラつくパターンは多いが、三つのパターンは珍しい。面積の大きさの為せる業だろうか?
コロナウイルスが猛威を奮う昨今、テレワークの推進によって都市部に住む必要がなくなった人々の地方移住への要望が高まっているというニュースをよく目にする。
これから設立されるデジタル省庁などは、東京都に本部を置いても、職員は各地に散らばっても大きな問題がなさそうに思える。
江戸時代では距離を埋める為の通信技術がなかった為、致し方なく地方分権的な政治が取られていたのだろう。通信や交通等の諸条件が格段に改善された現代でもう一度地方分権志向に向かうとどうなるだろうか?
便利と不便の両面が見えてきた上で、大きな問題がなければ意外と受け入れられて、気付いたら新しいスタンダードになるのかも知れない。