彼が大阪に来た当日、私はまだ前の職場で働いていた。既に周囲も私の退職予定を知っており、何とはなく触れ難いものに対する様な距離感のある対応をされていた。
後片付けの様な仕事を処理し、同部署の先輩・後輩に仕事の引継を行い、時々は前部署で関係のあった人達にも挨拶をしたりして、定時までの少しばかりの時間を埋めていく。
もうすぐここを離れていくんだなと実感すると、意味が薄いと思っていた日々にも幾らかの色彩を感じるのが人間の性なのか、不思議な郷愁の様なものを感じていた。
そして仕事を終えて帰宅し、少しばかりの部屋と心の整理をした後、彼との合流を果たした。
前回に彼と会ったのは10ヶ月前、彼が福岡にいた頃に私がフェリーで会いに行った時だ。しかしその3ヶ月前にも福岡で会い、更にその6ヶ月前には大分で会っており、遠方に離れた友人の中で彼と会う頻度は特別に高い。
大学の友人の中でも特に面白い男で、幾つもの武勇伝(?)を持っており、話していてネタに尽きることがないのがとても楽しい。かく言う私も、彼から見てかなりクレイジーという評価を受けている様だが(笑)。
夕食にも良い時間ということもあり、近場の「串料理 KOHAKU」にて串揚げをいただいた。
彼の要望の「大阪らしい」グルメの条件に合致しており、私も行ってみたいと思っていた。
大衆感のある串カツも良いが、敢えて串揚げにすることで、雰囲気も含めた大人の食事の楽しみを感じられたのも良い選択だったと自画自賛してみる。
コース料理で、小松菜のお浸しやローストビーフの前菜から始まり、有頭海老、牡蠣、蟹爪やウズラといった様々な素材を串揚げにしてもらった。
料理を一品ずつ出すことには、温かいものは温かいうちに、冷たいものはより冷たいものとして美味しく食べられる様にという意味があり、また私達が合間に会話を楽しむ為の余裕を持たせる為でもあるという。
カウンターで2人で肩を並べ、料理に舌鼓を打ちながら、会話も弾んで良い時間を過ごすことができた。
久々に会って話したいことは山ほどあり、美味しい料理もありで、口が大忙しだ。
私はあまりおしゃべりな方ではないが、気のおけない友人と尽きない話題で盛り上がることが出来るのは嬉しく思う。
「串」という漢字は、二つのものが棒に刺さっている様子からできたと言う。
しかし私には、「口」の字が二つ入っていて、真ん中の棒がその二つを繋ぐ道にも見える。
串揚げが我々二人の口の架け橋となって、会話を途切れさせない様な、そんな夜のひと時。温かく楽しい時間が、翌日からの旅立ちに向けての活力を与えてくれた。
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