
海の景色を眺めながら走り続け、良い具合に空腹となって時間も正午を超えたところで、通りがかりにラーメン幸雅というお店と、そこに並ぶ人達を見つけ、ここで昼食とすることにした。
鳥取のラーメンは牛骨ラーメンとのことで、私にとっては初の牛骨ラーメンで、未知との出会いだった。
初めての味を前にしても、私のラーメンへの対応は変わらず、いつもの様に先ずはスープをいただいた。ラーメンの味の9割はそこで決まると言っても過言ではないかも知れないスープを最初に少し飲むことで、その方向性を理解して楽しむ考えでそうしている。
そうして味わったひと口目のスープは、甘く澄んでいた。豚骨や鶏ガラとは明らかに異なる甘味は何から来ているのだろうか、実は野菜だったとしたらそれはそれで納得だが。
自転車旅の途中で空腹だったので、セットで牛すじ丼もいただいた。自分でもそこそこに料理はするのだが、手間と時間のかかりがちな牛すじ料理などは殆ど作らず、店で食べる様にしている。

牛骨ラーメンと牛すじ丼を堪能し、エネルギーに満たされた勢いそのままに走り出したい気持ちを抑えつつ、直ぐ側にある由良駅とその周辺施設のコナン関係の展示を眺めてから向かうことにした。
作者の青山剛昌先生はこの辺りの出身で、氏のサインや原画が由良駅内に展示されており、関連商品が購入できる。駅の表示や内部のコインロッカーまでコナンラッピングされており、正に地元のスターといった扱いだ。そこに加えてこの頃は同じく鳥取県出身の石破首相が誕生した為、まだまだ鳥取は盛り上がりそうだ。

しばらく西を目指して走り、大山地区にたどり着くと、そこからは宿泊先のある大山登山口までひたすらに登り続けるヒルクライムが始まった。
いつも旅をする度に、今回は比較的軽量ではあったが、荷物を背負ってのヒルクライムが入るのは中々にしんどいものだ。全体で12km程の中々の距離に加え、最後の1km程では斜度13%以上となり、蛇行をしながら登りつつも速度が落ちていき、滑って落車しそうにもなった。
ここ数ヶ月、トレーニングと食生活の調整によってずっと体重が下がっており、ヒルクライムは得意とは言わないまでもそこそこにこなせる様になったにも拘らず、これだけのキツさは久々だった。それだけに、楽しく思えてしまう自分がいたことにも驚いていた。
何とか1時間程かかって登り切り、宿に荷物を預けた後、私は近場の温泉の豪円湯院へ向かった。
大山では温泉も湧き、シャワーからも温泉が出ていた。成分が苦手な人や、単純な水で身体を洗いたい人にとっては不便かも知れないが、最後に身体を流しても温泉成分が残るので、温泉を最後まで楽しめるのは良いところだと思った。
謳われているメインの効能は酸素還元で、温泉を飲んでみたところ、鉄の味がした。有馬温泉の金の湯と同様に。
また、ここの一階の受付の隣では豆腐や豆乳を売っている。夕食の前だったが、風呂上がりに豆乳ソフトクリームを食べ、夜風を浴びて帰ると少し冷えて良い塩梅だった。
宿に戻って夕食をいただき、翌日の用意を終わらせ、布団に横になって一日の終わりを迎えた。翌日はどうなるだろうか、大山の朝を楽しみに眠りについた。
