
2025年7月31日、私は約1年ぶりに青森県へとやってきた。いつも年に数回は青森県に来ているものの、今回は少し間が空いたのは、仕事の充実によるものだと思える様になってきた。
今回の目的の一つ目は、令和7年度の弘前ねぷたまつりで、来訪した翌日の8月1日から開催された。
ねぷたの時期に弘前を訪れるのはこれで3回目だが、今までとは違い、今回は運行側としてねぷたの曳き手となるべくやって来た。
いつも観るばかりの祭りの内側に参加できることに、遂にこの日が来たと、待ちに待った思いだった。
前日夜にいつものゲストハウス チャラに宿泊し、翌日の流れを聞いた。
その道すがらで、参加団体の青山・宮園地区のメンバーが集会所に集まって前夜祭の打ち上げをしていたので、簡単に挨拶をした。余所者であろうと、地道に通って縁を繋いだことで、こうして受け入れてもらい、運行側に来られたことを嬉しく思う。

まつり当日の昼に友人と合流し、撫牛子駅の近くにある煮干し中華そばの名店『たかはし』にて、久々の煮干し中華そばを食べた。
今回は金曜日ということで、前回の様に行列を作ることなく入店できたのが嬉しい誤算だった。この日のその時間には32℃を超えており、弘前らしからぬ暑さだったのもあり、並ぶのを危険と判断した人が多かったのかも知れない。
今回、私はチャーシュー麺大盛を注文した。ここは大盛の基準値が高めの様だが、それ以上に太麺でかなり水分を吸っていたこともあり、一般的な大盛を超えた大盛感だった。
スープは煮干しを色濃く感じたが、煮干しだけでなく、豚骨や鶏ガラも使われていて、それらの複合的な旨味が舌の上にしっかりと残った。
塩味も濃い目で、この時期の熱中症対策にも有効だろう。暑い夏だけでなく、寒さが厳しい冬においても、この濃さが活力に繋がるので、これまた乙だ。
実際、私は前回は雪燈籠まつりの時に立ち寄り、その美味しさに再度の来訪を決めた。

こうして想定以上に満腹になり、暫く街を歩いていると、本日の出陣を待つねぷたが収められた小屋を幾つか見つけ、その後には幾つものねぷたが会場へと動き出しているのを見つけた。いよいよ祭りの始まりが近付いて来ているのを実感し、こちらの気分も高まってきた。
ゲストハウスに戻り、18時頃に青山集会所から会場へと向かうバスに乗り込んだ。今回の運行で囃子や牽引を担当する地元の皆様の顔を見て、会話に耳を傾けてみた。祭りに向けて落ち着かない子どもや、それを宥める大人、祭りへの緊張感も何のそので夏休みの予定を考えてワクワクしている子どももいて、何だか微笑ましさを覚えた。
皆が真剣さを大事にしつつ、祭り自体を楽しむ姿勢を持ち続けて、きっとこの祭りが続いていくのだろうと思ったからだ。
会場の所定の位置につき、青黒い空にねぷたの赤色と電飾の黄色が映える頃、出陣をまだかまだかと待ち遠しく思いながら暫く待ち続けた。その間にも、本日の動きをメンバーと確認し、心身の準備をしていた。待望が焦りに変わり、それも落ち着いて万全の調子になった。

あとは出陣を待つのみというところで、我々の待機場所からは曲がり角の先で見えないスタート地点で祭囃子が聞こえ始めた。さぁ、ここからスタートだ!…と、気持ちが前のめりになったところで、前のねぷたが中々進まないことに気付いた。どういうことだろうか?少し動いたと思えば、またすぐに止まるを何度も繰り返していた。
スタート地点で何か問題が起こったのだろうかと思うも、持ち場を離れてここから動くわけにもいかず、足踏みしながらやきもきしていた。後で知ったのだが、初日はスタート地点でねぷたの審査会も行われていた為に、それで何度も止まっていたのだ。
スタート地点を越えるまでに1時間以上もかかり、それなりに焦りと苛立ちを覚えながらも、遂に始まったねぷたの曳き手としての役目を楽しもうと、ゆっくりと前進した。
左右に二人ずつ就いて動かすので、一方が前に出て傾かない様にする必要があった。私は左翼に就いたのだが、最初の内は力加減が分からず、右翼との連携が上手く行かなかったことで、やや蛇行していた。
それも次第に慣れてくると、声かけしながら安定して進む様になった。ロードバイクで言えば、ケイデンスよりトルク重視という具合で、私の得意な領域だった。
沿道で観覧している人の顔を見る余裕のある、ゆっくりとした運行だったが、戦の出陣をモデルにした祭りということで、領地の民衆にその勇姿を見せ付ける意味もあるのだろう。
1時間半程の運行で、弘前城からみちのく銀行を曲がって少し進んだ辺りで本日の運行は終了した。地元の人達はバスで帰り、残ったねぷたはレッカー車が運んでいった。
私達は歩きながら、ゲストハウスへの道すがらにあったビッグボーイで夕食を食べた。一仕事終えた、という程の疲労感でもなかったが、楽しみにしていた祭りを無事に完了させることができた安堵感で、ハンバーグの旨味は身に染み入る様だった。
ゲストハウスに戻り、シャワーを浴びて翌日の流れを話し合い、眠りについた。翌日は青森市のねぶたまつりに、もう1人の友人と合流して参加することになっていた。
次回、東北夏祭り2025 ②青森ねぶたまつりに続く。



